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ネタバレあります

【感想文】天穂のサクナヒメ(ネタバレ少な目版)

こんにちは。やってますか。僕はやったし、君にもやってほしい。今日は天穂のサクナヒメの感想文です。僕の拙い文章でこのゲームの魅力をどこまで伝えることができるのかわかりませんが、頑張って書くので頑張って読んでください。

 

色んなところで話題になっているのでご存じの人も多いでしょうが、アクションゲームと稲作シミュレータがくっついているゲームです。アクションで素材を集め、稲作でいい米を作るとサクナヒメが強くなる。新しいステージに挑戦できるようになる。

 

まずはじめに言いたいのは、僕は天穂のサクナヒメをとても美しいゲームだと評価しているということです。作り、食べて、戦う、そしてまた作る。この繰り返しが、単純でつまらない『作業』にならないように施された工夫がすごい。新たな農業技術、毎年違う天候条件、手持ちの素材で変わる献立、新たな武技でもたらされる爽快感、夕食時の会話、完成した米の評価。煩雑といっていいほどに用意された要素すべてが次の喜びのための準備であるかのように振る舞うのです。

 

おそらくこのゲームの稲作は、個々の作業こそ細かく面倒くさく作られているはものの、ゲーム内で得られる攻略情報の通りに進めてさえいれば、多少虫に食われようとも病気が発生しようとも、前年よりは必ず良い米が完成するように設定されているのだと思います。その中でどこまで米作りにこだわるかはプレイヤーに委ねられており、頑張ったからといって必ずしもいい結果が得られるとは限りません。

 

一度でも米作りに真面目に向き合うと、プレイヤーが現役米農家でない限りはほぼ確実に調べものを要求されます。病気や虫や肥料についての細かな情報はゲーム中ではほとんど得られない、またはゲーム中盤以降にならないと教えてくれないからです。壁にぶちあたったときに自分で調べて、試行錯誤する。それで自分なりのいい米が完成したとき、その喜びはとてつもなく大きい。この喜びがストーリーにおけるサクナヒメたちの成長に説得力をもたせるわけです。

 

サクナヒメは名家に生まれ、格の高い神である両親の遺産を食いつぶしながら、都で悠々自適の日々を送っていました。ただ良い家に生まれたというだけで地位が確約され、ろくに働くこともせず、人の気持ちを慮ることもできない。そんな彼女はある事件から5人の人間とともに島流しにされてしまう。その島でとりあえず生きていくために稲作をしよう、というのがこのゲームのあらすじなんですが、都会の温室育ちのサクナヒメは当然いやじゃいやじゃと文句ばっかり垂れるわけです。人間たちもサクナヒメを神として崇めるでもなく、不平不満ばかり言ったり。

 

ストーリーを読み進めていくと、いろんな出来事がありながらもサクナヒメたちは協力して島でのサバイバルを遂行します。稲作によって米や田んぼが強くなっていくのと同じように、彼女たちも神、または人間として、『ひととして』成長していくわけです。

 

生まれも育ちもバラバラの彼女たちが、互いの思想をすり合わせながら共同生活をしていく。2章くらいで皆で歌った田植唄。口を開けば不満や愚痴が出てしまう、だから先人たちは、歌うことで辛い田植えを乗り越えたのだというこのシーンは、このゲームにおける屈指の名シーンだと思っています。

 

生きていく上で辛いことなんて、誰にだって大なり小なりあるもので、それでも顔を上げて前に進まなきゃいけない時というのは必ずあって。その万人に共通する苦しみを全員で歌って乗り越える。

 

とにかく説得力がすごいんですよ。稲作に真面目に取り組んでいると、そよそよと揺れる苗から黄金色に輝く稲穂まで、一年中田んぼとにらめっこすることになって、それは本当に大変なことなんですけど、その苦労の先にようやく収穫していい米ができたら、ああ頑張ってよかったな、サクナヒメも強くなるし、こいつらにもいいもん食わしてやれるなって、心からそう思える。

 

夕餉(夕食)のシーンも本当に上手で、各キャラクターの性格や考え方などは夕餉の時の会話であきらかになっていきます。同じ釜の飯を食った仲間という言葉がありますが、一緒に食事をすることで、登場人物たちも互いに理解していくし、プレイヤーも彼女たちのことを理解していく。米作りをテーマにしたゲームが、食事をちゃんと大事に扱っていて本当に嬉しかった。

 

そんなとき食卓が変な草を煮ただけの汁と謎の肉の焼き物だけだったらさみしいじゃないですか。僕ははじめて銀シャリが食卓に出たとき大変感動しましたし、味噌汁と天ぷらが並んだ時などはちょっと涙が滲んでしまいました。ひとつだけ不満点があるとすれば『鍋』がないことでしょうか。ひとつの大きな鍋をみんなでつつきながら親睦を深める。僕はそれが見たかった。僕が条件を満たしてないだけで存在していたらごめんなさい。

 

中盤以降、農業技術もそうだし、物資の調達など色んな面がどんどん便利になっていきます。ストーリーも後半まできっちり詰まっていて、最後まで一切飽きることなくプレイすることができました。味のしなくなる瞬間が存在しなかった。すべての要素が絶妙に相互作用を及ぼして、喜びが次の喜びを生み出し続ける。起承転結も美しく、本当に最後の最後まで楽しむことができました。

 

 稲作パートがガチすぎて農林水産省攻略サイトwwwみたいな耳触りのいい言葉だけでなく、アクションパートの簡単操作の爽快感とトライアンドエラーも、ストーリーの素晴らしさも全て丸ごと味わってほしいなと思いました。捨てるとこないですよ。このゲーム。ちゃんと最後までクリアしてほしい。すごいから。まじで。

 

実るほど頭を垂れる稲穂かな。

 

天穂のサクナヒメ、Nintendo switchPS4、Steamにて5478円。え、5478円安すぎない?全員買いましょう。感情ゲームオブザイヤー。製作者に感謝。この素晴らしいゲームを作って、世に送り出してくれて本当にありがとうございました。

 

ではまた。